東京高等裁判所 昭和39年(ネ)1842号 判決
被控訴人は右賃貸借は右仙太郎が賃料支払を六箇月分以上怠つたので解除されたと主張する。右主張の趣旨は明確でないが、被控訴人が解除の通知を発した昭和三〇年二月二八日現在で右仙太郎の賃料滞納が六箇月分以上に達したので、調停条項に従い契約は当然解除の効果を生じたが、これを確認する意味で右解除の通知をした、かりに当然解除とはならず解除の通知によつて解除の効果を生ずるとしても、右のとおり解除の通知をした、という趣旨に解すべきである。
控訴人は、本件調停調書には賃料が増額された場合についてなんらの定めもしていないので、解除条項は賃料が増額されたときに当然失効した、また被控訴人は賃料増額とひきかえに右解除条項の利益を放棄したと主張するけれども、本件のように一箇月坪二円の地代が三円ないし四円に増額されたからといつて、特段の事情もないのに右解除条項が当然に失効するとか、被控訴人が右条項上の利益を放棄したものと解釈すべき合理的な理由はない。また控訴人は、被控訴人が契約解除の通知をしたのは、解除条項が失効したことを自認している証拠であるともいうが、前記のように当然解除となつたことを前提として、これを確認する意味で解除通知をする場合もありうるから、右通知をした事実をもつて右解除条項が失効したことを被控訴人が自認したものということはできない。
元来、本件調停条項の合理的解釈としては、特段の事情がないかぎり、前記解除条項は増額された賃料についても適用があると解すべきところ、控訴人の右主張以外になんら特段の事情は認められないから、右解除条項は本件増額後の賃料についても当然に適用されるものというべきである。
ところで控訴人は、被控訴人が解除通知を発した昭和三〇年二月二八日現在で、過去六箇月分すなわち昭和二九年九月分から昭和三〇年二月分までの賃料を、仙太郎が被控訴人に支払つたことは主張しない(その翌日に滞納賃料計一二万円を弁済のため提供したと主張しているがこれを認めるべき証拠もない。)から、少くとも右昭和三〇年二月二八日の経過とともに、右仙太郎と被控訴人との賃貸借契約は当然に解除の効力を生じたものと認めるべきである。
また、被控訴人が仙太郎に対してなした解除の通知は、右解除の効果を確認させ明渡を催促するためになされたものと解するのが相当であつて、控訴人が右解除通知は相当期間を定めた履行の催告がないから、解除の効果は生じないというのは、的はずれの議論といわざるを得ない。
(渡辺一 岡田 和田)